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▼ビリリ便り
http://blog.plankton.co.jp/?cid=4216
プランクトンのスタッフが、ベンダビリリの初めてのフランス公演に同行してきました。



▼2009年10月 WOMEX 2010
BILILI PHOTO

 ものすごいものを観た。気がつくと、涙を流しながら最前列で踊っていた。泣いたのは、身障者に対する哀れみの気持ちなどでは、もちろんない。言いようのない力と喜びがからだの奥底からこみ上げてきて、自然に涙が溢れてしまったのである。こんなこともあるのか…!?。
とにかく、とてつもなくポジティヴな音楽なのだ。
 15年ほど前から毎年秋にヨーロッパで開催されてきたワールド・ミュージックの国際見本市〈WOMEX〉。その年のワールド・ミュージック・シーンで最も注目を集めたミュージシャンには「アーティスト・オブ・ジ・イヤー」が贈られるのだが、デンマークのコペンハーゲンで行われた今年のWOMEXでは、その栄冠はスタッフ・ベンダ・ビリリの頭上に輝いた。僕が観た彼らのライヴは、その授賞式の直後に1時間ほど行われたショウケイスと、更にその夜にコペン市内のライヴハウスで行われたもの、計2回である。
 メンバー8人(4人は車椅子、一人は松葉杖)のうち、楽器を演奏するのは、ギター、ベース、ドラム(といっても通常のドラム・キットではなく、民族楽器のようなパーカッションを組んだもの)、そして噂のサトンゲの4人だけ。残り4人は歌とコーラス、そしてダンスだけ。つまり、楽器の音数はかなり少ないし、エフェクターなど一切使ってないアンサンブルは一見ひ弱なのだが、しかしトータルとして出てくるサウンドは、とんでもなくダイナミックである。CDで聴くよりも、はるかにパワフルかつダンサブルなサウンドだ。コーラスが分厚いせいもあろうが、この1年足らずの間にヨーロッパ各地を精力的にツアーして周り、ライヴ・バンドとしての地力を一段と高めたからだろう。
 演奏技術もかなりのものだ。パーカッションとベースは確かなリズム・キープ力でファンキーなアンサンブルのボトムをしっかり支える。そして、注目のサトンゲ。まだ18歳の無口な青年ロジェが自ら考案したこの創作楽器は、空き缶に張ったたった1本の弦で、驚くほど多彩なサウンドを繰り出す。これまた、CDに収められた演奏とは比べ物にならないほど、テクニックも表現力も向上しており、日々の研鑽を窺わせる。まさに1弦のジミ・ヘンドリクスだ。
 キンシャサのストリートで長年鍛え、「アフリカ1のバンドになる」とずっと公言していたというが、実際彼らの演奏からは、どこを切っても「俺たちはやる」「俺たちは絶対に負けない」「俺たちには明日がある」という揺るぎない決意、希望が鮮血のように噴き出している。その、とことん前向きなビートに合わせて、左右長さの違う足を松葉杖で必死に支えながら身をよじって歌う者、車椅子を飛び降りて床の上で転げ周りながら全身で歓喜を表現する者…。
 言葉はわからなくても、彼らの思いはすべて完璧に伝わってくる。音楽って、こんなにも人を勇気づけ、新しい力をくれるものだったのか。

松山晋也(音楽評論家)