Liam O'Maonlai & Steve Cooney with Niamh Parsons
リアム・オ・メンリィ&スティーヴ・クーニーwithニーヴ・パーソンズ来日公演2000

最も強烈なアイリッシュ・ソウル&グルーヴ!!
"無敵の天然力"シンガー=リアムと"豪傑"ギタリスト=スティーヴの、アイリッシュ最強野生コンビに、
力強いヴォーカルで現在のシーンを担う本格派&実力派のニーヴ・パーソンズが加わった、
夢のトリオが日本でも実現!!

リアム・オ・メンリィ
(ヴォーカル、ピアノ、ボーラン、ホイッスル、ディジリドゥ)

スティーヴ・クーニー
(ギター、ディジリドゥ)

ニーヴ・パーソンズ
(ヴォーカル)


公演の様子:ステージ写真&アンケート感想より

打ち上げ&オフの様子

リアム・オ・メンリィ&スティーヴ・クーニーwithニーヴ・パーソンズ
9/28(THU)19:00 TOKYO ASTRO HALL ゲスト: DONAL LUNNY
9/30 (SAT) 17:00 MIE 猿田彦神社「おひらきまつり2000」
10/2(MON)19:00 OSAKA BANANA HALL ゲスト: 岡野弘幹
リアム・オ・メンリィ&スティーヴ・クーニー
10/3(TUE)19:00 TOKYO ASTRO HALL ゲスト:金子竜太郎(鼓童)
山口洋(ヒートウェイヴ)


 リアム・オ・メンリィ、スティーヴ・クーニー、そしてニーヴ・パーソンズ。この3人が一緒にステージに立つという。本当に仕切れるのか、プランクトン? 「無敵の天然力」で縦横無尽にディープ・ソウルをふりまく孤高の人がホットハウス・フラワーズのリアムなら、スティーヴは類のない野生的風貌とイノセントな奇行と驚愕の演奏能力でデインジャラスすれすれのスピリチュアル・ゾーンを築き上げた「風狂の人」、そしてニーヴは、なんとも言いようのない滋味を深々と湛えた温かい声と底無しの酒豪ぶりで“ポスト・ドロレス・ケーン”の期待を今や現実のものとしつつあるアイリッシュ・シーンきっての「ソウル・マザー」である。アイルランドのミュージシャンには、特異な個性というか体質を持ったクセモノが少なくないわけだが、今回はとりわけ、3人が3人とも制御不能な怪物。心配だ。
 スティーヴの場合、ファンの間でとりわけ期待が高いかもしれない。なにしろ、98年の「アルタン祭り」の時、デュオ・アルバム『アイルランドの絆』も出しているアコーディオン奏者シェイマス・ベグリーとのデュオ・ライヴが決まっていたにもかかわらず、土壇場での病気のため演奏不可能となり、急遽、弟子のジム・マレイが代役を務めたという経緯がある。ジムはよく重責をまっとうしたが、しかしやはり、スティーヴの代わりは誰もできない。全く同じように演奏しても、音に込められた熱と加速感が違うのだ。僕はダブリンで一度だけライヴを体験したことがあるが、パーカッシヴに弾け切れまくるギター・ストロークは、アクロバティックなまでにスリリングであり、同時に、豪放さの裏に潜む野生児の繊細さ、イノセンスをも焙り出している。その一心不乱な姿を見ているだけで、泣けてしまうのだ。ドーナル・ラニーやアルタン、シャロン・シャノンなどアイリッシュのVIPたちがこぞって彼に心酔し、共演しているのも当然だろう。
 92年にデビュー・アルバムを発表し、アーカディにも参加したものの、近年までは知る人ぞ知る存在だったニーヴは、昨年出た3枚目のアルバム『ブラックバードとつぐみ』で遂に自分の世界を確立した感がある。あらゆる点で過剰な装飾を排し、ごくシンプルに伝統音楽の真髄に迫ったこの作品によって、ニーヴはシンガーとしての自分の魅力と強さを改めて確認し、ジューン・テイバー的な一種のブルース・トラッドとでも言うべき幽玄さをも表現できるようになった。最近出た新作『イン・マイ・プライム』もますますディープだ。彼女の声はアメノウズメよろしく、二人の男の歌心を更に激しく鼓舞するはずだ。
 それにしても、よくこの3人が……。やっぱり心配だ。

松山 晋也

 リアム・オ・メンリィが、今年もまたやってくる。あのホット・ハウス・フラワーズの…、などという説明はこれを読んでいる人にはもはや必要ないでしょう。去年、キーラのローナン・オ・スノディとやった来日公演は感動的だった。で、今回はスティーヴ・クーニーとのステージとなります。
 スティーヴ・クーニーは、現在のアイルランド音楽において欠かすことのできないギタリストであり、また、シャロン・シャノンやソウル・フラワー・ユニオンがやった名曲「イーチ・リトル・シング」のほか、メアリー・ブラックやアルタンの曲なども作ったコンポーザーでもあります。アコーディオンのシェイマス・ベグリーとのコンビでやったライヴをダブリンで見たのですが、その面もちは、裸足でギターを弾く巨漢の哲学者といった感じで強く印象に残りまた。変わり者が多いアイルランドのミュージシャンのなかでも、スティーヴ・クーニーは際だって異色です。出身がオーストラリアであり、アボリジニと生活していたとか、プランクシティの音楽にナゾを感じてアイルランドに渡ったものの、しばらくは漁師をしていたとか、現在はなぜか水車小屋に住んでいるとか、まったく何を考えているのでしょうか。
 このライヴは、そんなわけで、またしても初めて見る衝撃を与えてくれることでしょう。

石田 昌隆

アイルランドの摩訶不思議ギタリスト、スティーヴ・クーニー

 スティーヴ・クーニーは謎の人である。1990年代、まさに彗星のように現れて、ベースでも活躍し、キーボードも操り、プロデュースも手がける。茫洋としたクーニーには「妖怪」ないし「精霊」の感じがする。アボリジニと生活していたのも関係しているかもしれない。アイルランド生まれではない、ということだけでは説明のつかない掴みどころの無さ。実はこの世界で生まれたのではないと言われても、なるほどと納得してしまう。
 オーストラリアはメルボルン生まれだそうである。祖先はアイルランドからの移民。17歳でプロになり、アメリカに行ったりした後、地元のロック・バンドを渡り歩く。その中にはオーストラリア最高のルーツ・ロック・バンド、ブッシュワッカーズや、過激なマルクシズム的歌詞でヒットを飛ばしたレッドガムなども含まれると言うが、録音としては形跡が無い。そして1981年、アイルランドへの片道切符を買って渡る。漁師やバスキングなどで食いつないだ後、ストックトンズ・ウィングというバンドにベーシストとして加わる。われわれが彼の名前を目にするのはこれが初めだ。
 ストックトンズ・ウィングは70年代末アイルランド西部に現れ、デ・ダナンのフォロワーから独自の境地を開いたバンドだが、クーニーはその三枚目でベース、ギター、マンドリン、それにディジリドゥーを担当している。しかし、この時は特に注目もされなかったし、クレジットではそもそも正式メンバーでもない。
 われわれが色めき立ったのは、1991年の BRINGING IT ALL BACK HOME である。そのビデオに、とあるパブの一角での、蛇腹とギターのデュオによる演奏があったのだ。もっさりしたおっさんが驚異的なメロディオンを無表情に弾いてゆくその向いで、ギターを、それもアイルランド音楽では他についぞ見ないガット・ギターを、弾くというよりは「叩いて」、蛇腹を煽り、引張りしている髭の男。強烈だった。唖然とした。止どまるところを知らずにどんどん熱くなってゆく演奏にひきかえ、二人の様子は実にクール。これこそが来日もしたケリィの名蛇腹弾きにしてシンガー、シェイマス・ベグリーとのコンビだった。ゲール語テレビの音楽番組 SULT でもこれが再現された。留めに、二人の名義によるフル・アルバム。
 そうして気がついてみれば、スティーヴ・クーニーの名前はそこら中にあるではないか。90年代でこれぞと思うアルバムに彼の名前がないことの方が少ない。一体、この男は何者なのだ。
 一つ確実なのはクーニーの音楽上のベースはアイルランド西部にあることだ。彼がアイリッシュ・ミュージックに関るようになったのはケリィであり、その独特のギター・スタイルはこの地方のダンス・ステップの研究から生まれている。今やかれはケリィの伝統の一部だ。一方で、そのギターはケリィの伝統に新たな命を吹きこんでもいる。筆者が勝手に言うのではない、クーニーとの共演もある地元のさる人物の証言だ。
 伝統音楽の革新者クーニーが、伝統と現代の双方にまたがって立つリアム・オ・メンリィと共演する。全く思いもよらぬ、目くるめくスリルが待っているにちがいない。

大島 豊

スティーヴ・クーニーとニーヴ・パーソンズに出会って

 リアム・オ・メンリィにスティーヴ・クーニー、そしてニーヴ・パーソンズ。こんな夢の顔あわせが日本で実現される。もうみなさんご承知のリアムのスゴさはもちろん、初来日となるスティーヴやニーヴも、音楽的にも人間的にもリアムに勝るとも劣らない個性をもった魅力あふれるミュージシャンなのですから、この組み合わせはまさに奇跡的です。
 これが実際にどれほどすごいことか、それを説明するのはとても難しいのですが、少しでもそれを知っていただきたく、ここでは、僕が出会った彼らの印象的な姿をご紹介しましょう。それはそれは強烈な記憶です。
 スティーヴに最初に会ったのは、1997年の春のこと。彼は、ロンドンでのアイリッシュ・ミュージック・フェスティバルに、アイルランドでは非常によく知られたアコーディオン奏者シェイマス・ベグリーとの名コンビ、ベグリー&クーニーとして出演していました。ベグリー&クーニーはアルバムも1枚発表しており、日本でも『アイルランドの絆』のタイトルで発売されていますが、そこではスティーヴがギターだけでなくベースやシンセサイザー、ディジリドゥなども演奏しており、非常に質の高い作品に仕上がっています。そのスティーヴに取材で同行した1週間ほどの間は、毎日が驚きの連続でした。
 もちろん、まず最初の驚きは、ギタリストとしての彼への驚きでした。パワフルで正確なカッティングと繊細でみずみずしいピッキングの両面を持ち合わせたその演奏スタイルは、他に例を見ないクオリティの高さを誇っています。
 しかし、彼はミュージシャンである以前に心からの音楽好きであり、そこにギターがある限り、延々と演奏を続けるのです。これが2つめの驚き。ある夜には、フェスティバルの他の出演ミュージシャンと一緒に宿泊中のホテルのバーで演奏をはじめてしまい、やめろという従業員の再三にわたる注意も無視して弾き続け、しまいには警察ざた寸前になったことさえありました。また別の夜は、ステージで3時間以上ノンストップで演奏したにもかかわらず、ステージを下りるやいなや叫んだ言葉は“モア・ミュージック!”。結局その晩は、またしてもホテルのバーで、アルタンのマレードやダーモット・バーンも巻き込み、朝の6時近くまで彼らの演奏が続いたのでした。演奏することが生きること。そう言っても、スティーヴの場合は過言ではありません。
 もうひとつ、スティーヴには別の驚きを感じました。ロンドンの真夜中のパブでのこと。言うまでもなくセッション大会が繰り広げられる中、居合わせたお客のおじいさんが、酔いがまわり過ぎて「どさっ」とイスから転げ落ちました。それを見たスティーヴは、セッション中にもかかわらず、とても大事なはずの自分のギターを文字通り放り投げ、狭いパブの中を走っておじいさんのもとへ駆けより、抱き起こしたのでした。商売道具を放ってまで人を助けようとしたその姿が感動的でもあり、また、少し滑稽でもありました。また、先に書いたホテルのバーでのオールナイト・セッションでは、睡魔に襲われた僕らを気づかってか、自ら率先してコーヒーや紅茶を入れ、眠い僕らを励ましてくれたのでした。これにもやはり感動し、その一方で少しだけ「素直に寝かせてほしい」と思ったりもしたものでした。
 そんなパーソナリティーに加え、その仙人のような風貌でも、スティーヴは強い魅力を放っています。今回ステージを共にするリアムはスピリチュアルな面でスティーヴを師と仰いでいるようですが、音楽的な部分だけでなく、人間的な部分にも尊敬の念を抱いているのでしょう。
 さて、そんなふたりと一緒に来日するニーヴ・パーソンズ。彼女も、ミュージシャンとしてもひとりの女性としても、非常に魅力的です。
 まずミュージシャンとしては、なんといっても“ドロレス・ケーンの再来”といわれる深みのある歌声で人気を集めています。1992年のデビュー作から数えて4枚目となる最新アルバム『イン・マイ・プライム』を発表したばかりですが、無駄を排したシンプルな演奏をバックに、時に切々と、時におおらかに、そして時に情感たっぷりに歌うそのアルバムは、早くも高い評価を得ています。
 彼女と最初に出会ったのは、1996年の末でした。今は別れてしまった彼女の夫ディー・ムーアと知り合った僕は、ディーの誘いでニーヴの家にお邪魔しました。彼女の家はダブリン郊外のベッドタウンにあるアパートメントで、庭も部屋の中も非常にきれいに整えられていた記憶があります。ニーヴは、チャキチャキの下町っ子のような女性でした。キーヴァという名のそれはかわいい娘の母親でもある彼女がその日僕に作ってくれたのは、タコス。ちょっと日本では経験できないぐらいの美味だったのが、忘れられません。
 とてもふくよかな彼女は、お酒も大好きでした。その日もタコスを食べながら、ドイツ産の甘い白ワインを飲んでいました。肝っ玉母さん、というと言い過ぎなのですが、強くて優しい母親という印象。だからこそ、ああいう暖かく美しい歌を歌えるのではないでしょうか。こうした女性像は、メアリー・ブラックにも共通するように僕は思います。そしてそれは、ダブリンの、いやアイルランドのすべての女性に共通する姿でもあります。
 今まではアイルランドに行かなければ会えなかった彼らに、日本で会える。こんなにうれしいことはありません。今度は僕が心からもてなす番ですが、僕がもてなす以上にみなさんがライヴで彼らに声援を送ることが一番のもてなしになる。これは間違いありません。きっと、僕が彼らと触れあったのと同じような親近感を、彼らは感じさせてくれると思います。

高橋晃浩


リアム・オ・メンリィ Liam O'Maonlai
(ヴォーカル、キーボード、ボーラン、ホイッスル、ディジリドゥ)
ソウル/R&B、ゴスペル、フォークそしてアイリッシュ・トラッドをブレンドした「アイリッシュ・ソウル・ミュージック」を表現し、人気を獲得したダブリン出身のロック・バンド、ホットハウス・フラワーズのフロント・マン(ヴォーカル、キーボード、ソングライティング)。天性のスポンティニアスな音楽性を持ち、毎回違った表情をみせる圧倒的なライヴ・パフォーマンスは世界屈指と絶大な評価を得る。ここ数年は、H・フラワーズ(`98)の他に、ドーナル・ラニー(`96)、ALT(`98)、リアム・オ・メンリィ<ソロ>(`99)と別プロジェクトで来日しており、いずれもその才能を発揮し日本の聴衆を魅了した。また、ボーラン・プレイヤーとしても優れており、アイルランドで1、2を争うほどの名手として知られる。最近では、ボーランの他、ホイッスル、ディジリドゥ、キーボードなどのソロ・プレイヤー、またはゲーリック・シンガーとしても活躍。トラッド系のアーティストとの共演が絶えない。

関連ページ ●リアム・オ・メンリィ1999年来日の様子 ホットハウス・フラワーズ1998年来日の様子
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Hothouse Flowers(アーティスト・オフィシャル)YOUR SOUL(日本のファンサイト)


スティーヴ・クーニー Steve Cooney
(ギター、ディジリドゥ)
チーフタンズのパディ・モロニーをはじめ、誰もが一目置き、現在のアイルランド音楽シーンにおいてドーナル・ラニーと並ぶ最重要ミュージシャン。野生的グルーヴ感と超絶テクニックでアイルランド一の実力派ギタリストとして、また数々の楽器(ベース、パーカッション、キーボード、ディジリドゥなど)を弾きこなすマルチ・プレイヤー、プロデューサー、作曲家として活躍し、無数の名作を残す。アーティストからの絶大の信頼を得ており、アルタン、ドーナル・ラニー、メアリー・ブラック、チーフタンズ、シャロン・シャノン、キーラ‥‥など多数のアイリッシュ系のアルバムにその名をみることができる。出身地オーストラリアではアボリジニの社会で生活したり、片道チケットでアイルランドに渡ってからは漁師とストリート・ミュージシャンで生計を立ていた、など数多くの逸話を持っている。現在は水車小屋の中にスタジオを作り、住み込み、スピリチュアルな音楽創作活動を行っている。


ニーヴ・パーソンズ Niamh Parsons(ヴォーカル)
ダブリン出身。アイルランドの大地を思わせる素朴で力強いヴォーカルで、現在、シーンを担う存在として活躍する本格派トラッド・シンガー。90年代に入り音楽活動を始め、『ルースリー・コネクテッド』('92)で彗星のようにデビュー。メディアから「ドロレス・ケーンの後継者」と高い評価を得る。2nd 『Loosen Up』('97)ではバンド“ルーズ・コネクションズ”をバックにコンテンポラリー色の強い音楽を聴かせたが、以降の3rd『ブラックバードと鶫』('99)、4th『イン・マイ・プライム』('00)では、シンプルなアコースティック・セットをバックに「ドロレス〜の後継者」ともいうべき、魂のこもった正統派の伝統音楽を聴かせ、伝統音楽を現代に受け継ぐ意志と覚悟を表明した。トラッド・バンド“アーカディ”のリード・ヴォーカルとしても一時活動しており、在籍時の『メニー・ハッピー・リターンズ』('96)では、ゲストで参加したリアム・オ・メンリィと共演している。また“Kiilera”というバンドでもツアーを回り、当時メンバーだったスティーヴ・クーニーとも共演している。