映画で楽しむケルト
見るケルト ケルトの美術 映画で楽しむケルト

映画で楽しむケルト

ケルトやアイルランドを題材にして、これまでさまざまな映画が世界中で撮られてきました。
アイルランド本土を舞台にしたもの、中世のケルト人を描いたもの、ケルト神話がベースになった小説を映画化したもの、アイルランド独立の歴史をテーマにしたもの、アメリカに渡ったアイルランド移民を描いたもの....。そこには、アイルランド人の気質が描かれていたり、アイルランドならでの自然、街、村、建物、人々、生活風景…などの映像やをみることができ、どの映画もアイルランド/ケルトならではの精神性を感じ取ることができます。
エンターテイメントとして楽しむと同時に、これらの映画をきっかけに是非ケルト、アイルランドへの興味を深めてはいかがでしょうか。

1. 壮大なアイルランドの自然の美しさを観る
2. ケルトの神話と美術に触れる
3. 世界に広がるケルト/アイルランド移民
4. ケルトの不屈の精神
5. ダブリン発の青春音楽映画





壮大なアイルランドの自然の美しさを観る

ライアンの娘(1970年/イギリス・アメリカ合作)

  20世紀初頭、イースター蜂起直後の反英気運が高まる独立戦争前夜のアイルランド南西部ディングル半島を舞台に、村に住む教師の人妻ロージーとイギリス軍将校との不倫を軸とした人間模様と心理を描いたヒューマン・ドラマの傑作。闘争前夜の民衆心理、虐げられたコミュニティの閉鎖性、そして弱者こそが強く持ち得る情や愛の強さなど、イギリスの支配下にあった当時のアイルランドとそこに生きる人々が抱える苦悩や葛藤を力強く描いている。
特に、全編にわたってみられるアイルランドの剥き出しの自然描写がとにかく見事な映像美で絶品。特に冒頭の雲~絶壁~海辺を歩く場面と、クライマックスに荒波の中で武器を回収する場面は、アイルランドの景観美と自然の力が強烈なインパクトを残す名シーンとして語り継がれている。監督は『アラビアのロレンス』『戦場にかける橋』などで知られる巨匠デヴィッド・リーン。




静かなる男(1952年/アメリカ)

  アイルランド移民を両親に持つハリウッドの巨匠、ジョン・フォード監督による人情喜劇の傑作で、自身のルーツへの深い愛情に溢れている。村上春樹も「何度も観返しているベスト映画」に本作を挙げている。心優しい元ボクサーが、長年暮らしたアメリカからアイルランドの小さな村に帰郷し、そこで一目惚れした勝気な村の娘と結婚するまでの村中を巻き込んだ大騒動を描く。牧歌的なアイルランドを生き生きと捉えた作品で、素朴な村の詩情溢れる美しい風景がたっぷりと堪能でき、劇中には郷愁を誘うアイルランド民謡が随所に使用されている。主人公やヒロインなど、人間味溢れる登場人物もアイルランド人のステレオ・タイプが満載。
司馬遼太郎は、この映画を取り上げ、アイルランド人の持つ気質について「アイルランド人の途方もない依怙地さ、信じがたいほどの独り思い込み、底抜けの人のよさ、無意味な喧嘩好きと口論好き、それに瑣末なことでも自己の不敗を信じる超人的な負けず嫌い…etc」「アイルランド的性格は人類の財産のひとつである」と記している。




アラン(1934年/イギリス)

アイルランドの西部にある孤島アラン。土も木もない岩だらけで土地あり、土の代わりに海藻を使用してわずかな野菜を耕す。荒れ狂う波の海で男たちは貴重な灯火用の油のために命がけのサメ獲り。そんな過酷な自然に囲まれた土地で暮らす人々の生活を捉えたドキュメンタリー映画の傑作。不屈の精神力で厳しい大自然と闘いながら力強く生きる人々たちの姿には大きな感動を呼ぶ。
この映画は一時期辺境ブームが起こった日本でも高く評価され、数々の著名人に影響を与えた。
司馬遼太郎はこの映画を深く愛し、のちにアラン島を訪ねる目的でアイルランドを訪れ、「街道をゆく 愛蘭土紀行」を執筆している。また、スタジオジブリの宮崎駿監督もこの映画を観てアラン島を訪れ、そこで見た景観がジブリ作品の創作インスピレーションの源泉のひとつになったという。




P.S.アイラブユー(2007年/アメリカ)ジェネオン・ユニバーサル

アイルランドの小説家セシリア・アハーンが執筆し、全世界で500万部以上のベストセラーとなった恋愛小説の映画化。最愛の夫ジェリーを失って悲しみにくれるヒロインのホリーに亡き夫から消印のない手紙が毎月送られてくる。その手紙に導かれるままに夫の故郷アイルランドに旅立ち、絶望の淵から少しずつ立ち直っていく。ニューヨークと対比して映し出されるアイルランドの緑の風景が美しく、ホリーとジェリーが初めて出会うウィックローマウンテン国立公園のシーンは見どころのひとつ。
また、音楽にも要注目。ポーグスやフロッギング・モリーといったアイルランド音楽を取り入れたバンドの楽曲が使用されるほか、夫がカラオケで歌う「ムスタング・サリー」はアイルランド青春音楽映画「ザ・コミットメンツ」へのオマージュ。重要な思い出の曲としてバーで演奏される「ゴールウェイ・ガール」はのちにシャロン・シャノンのヴァージョンで国民的大ヒット曲となった。







ケルトの神話と美術に触れる

ブレンダンとケルズの秘密(2009年/フランス・ベルギー・アイルランド合作)

ケルトの神話や歴史をベースとしたアニメーション映画を制作するスタジオ「カートゥーン・サルーン」のトム・ムーア監督第1作目で、アカデミー賞にもノミネート。9世紀の中世アイルランドを舞台に、ケルト美術の最高傑作と言われるアイルランドの国宝「ケルズの書」の制作秘話を描く冒険ファンタジー。武力で侵略してくるヴァイキングと対照的に、本やアート、歌やイマジネーションを武器に希望を求めて戦う少年ブレンダンの姿は、それらに誇りを持ち続けるケルトの精神そのもの。ケルトの海の妖精伝承をベースにした次作「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」もケルト神話を知るのにぴったりの作品。音楽はともにアイルランドのバンド、キーラが担当。




『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ

J・R・R・トールキンによるファンタジー小説「指輪物語」を映画化して大ヒットした作品。ケルト神話の世界観が大きなベースとなっている作品で、様々なケルトからの引用やモチーフを全編に見ることができる。魔法使いは古代ケルトの神官・ドルイドが、またエルフやドワーフ、ゴブリンといった異界の種族たちはケルト神話に登場する小人や妖精が起源となっている。物語の最後に、傷を負った主人公フロドが船で西の果ての島に向かうが、これもケルト神話の影響が濃い「アーサー王物語」で、瀕死のアーサーが西の楽園アヴァロンへと船で運ばれていくシーンを彷彿とさせる(ケルトでは不老不死の楽園ティル・ナ・ノーグが西の最果てにあると信じられている)。
「指輪物語」は、人間と妖精、神などが混在していたケルトの世界観を新たな現代ファンタジーに蘇らせた金字塔的な作品で、その後の数々のファンタジー作品、「ハリー・ポッター」日本のゲーム作品(「ファイナル・ファンタジー」「ドラゴン・クエスト」など)にも多大な影響を与え続けている。また、劇中歌の「メイ・イット・ビー」はケルト音楽を代表する歌姫エンヤによる楽曲。




ホビット 思いがけない冒険

ロード・オブ・ザ・リングの前日譚(三部作)




『ハリー・ポッター』シリーズ

世界的ベスト・セラーとなった児童文学&ファンタジー小説の映画化。作者のJ・K・ローリングは、この物語をケルト圏であるスコットランドのエディンバラで書いた。「ロード・オブ・ザ・リング」同様、魔法使いや妖精、異界の種族など、ケルトの世界観がそのベースとなっており、ケルトのモチーフが随所に散りばめられている。例えば、ハリー達が使う魔法の杖はオークの木で作られているが、魔法使いのモデルと言われるケルトの神官・ドルイドは「オークの木の賢者」の意。また、全シリーズを通して、作中で様々な事件が起こるのは10/31のハロウィーンの日。もともとはハロウィーンは古代ケルト暦の大晦日に行われる収穫祭”サウィン”が起源と言われており、10/31にこの世と異界の境がなくなり、異界の生き物や悪霊がやってくると信じられていた。物語の根幹をなすもっとも重要な出来事である、ハリーの両親が宿敵ヴォルデモートに殺された日も10/31だった。







世界に広がるケルト/アイルランド移民

タイタニック(1995年/アメリカ)

世界的に大ヒットした恋愛&パニック映画だが、その背景はアイルランド移民の物語そのもの。タイタニックは豪華客船だが、北アイルランドのベルファストで造船され、アイルランドからイギリスを経由してアメリカに向かったため、たくさんのアイルランド移民が環境の悪い船底の三等客室に乗っていた。イギリス上流階級の見栄と権威に満ちたレストランと対照的に描かれた、アイリッシュが分け隔てなく自由に陽気に楽しむ三等客室パーティーのシーンはアイリッシュ気質を的確に表現した名シーンで、その音楽やダンスが世界に広く知られるきっかけとなった。主人公のジャックも、芸術を愛し、夢を追ういかにもアイリッシュらしい人物として描かれており、レオナルド・ディカプリオはセリフにアイリッシュ・アクセントを意識したそう。
サウンド・トラックもアイリッシュ音楽を意識したものが多く、特にセリーヌ・ディオンによる主題歌「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」では冒頭の郷愁的なメロディにアイルランドの伝統楽器ティン・ホイッスルがフィーチャーされ、大ヒットした。




風と共に去りぬ(1939年/アメリカ)

アイルランド系移民の一家に生まれたスカーレット・オハラの半生を描き、ピューリッツァー賞を受賞した小説の映画化。オハラ(O’hara)はアイリッシュ・ネームで、スカーレットの生命力溢れるたくましい性格は典型的なアイルランド気質。オハラ家が経営していた農園タラは、スカーレットの父親がアイルランドの神聖な場所とされている丘であり、ケルト人の聖地とされている場所の名前から名付けたもの。作中でも有名なスカーレットのセリフ、「タラへ帰ろう」は、故郷に戻ると同時に、決してくじけない不屈のアイリッシュ精神に立ち帰ろうという意味も込められていると思われる。
アカデミー賞の作品賞・監督賞・主演女優賞・助演女優賞・脚色賞など他に特別賞を含む9部門を受賞した、映画史に残る普及の名作。




ギャング・オブ・ニューヨーク(2002年/アメリカ)

19世紀初頭、貧しいアイルランドを離れ、アメリカン・ドリームを夢見たアイリッシュ移民達が移り住んだニューヨークを舞台に、アメリカ生まれとアイリッシュ移民のギャング抗争を描いた作品。ギャングとはいえ、アイリッシュ移民達は当時ひどい差別を受けていた弱者だ。死に物狂いの船旅の果てに、ニューヨークに降り立っても、あらゆる店や職業紹介所には「アイリッシュお断り」の張り紙が貼られ、死と隣合わせの危険な仕事しか得られなかった。そんなアイリッシュ達が、自分たちの生きる道と権利と尊厳をかけて闘う姿が描かれている。当時のアイリッシュ移民の労働環境については、ドキュメンタリー映画「空中ランチ」でも知ることができ、彼等によって今のアメリカのインフラ整備面などの礎が築かれたのを知ることができる。
エンドロールで流れるのは、アイルランドのバンドU2が歌う”The Hands That Built America”で、「この手がアメリカを築いた」というアイリッシュ移民の心情が歌われる。




ブルックリン(2015年/アイルランド・イギリス・カナダ・アメリカ合作)

1950年代、故郷のアイルランドの田舎町から新天地アメリカ合衆国のニューヨーク・ブルックリンへと一人で渡った女性の成長を描いた物語。「風と共に去りぬ」のスカーレットにも通じるアイルランド気質を備えたエイリッシュが、孤独を乗り越えてアメリカで奮闘し居場所を築いていく。アメリカに渡って間もない頃、重度のホームシックに陥った時、下層労働階級のアイリッシュ達が集まるカトリック教会のクリスマス・パーティーが心の救いとなるのだが、ここで故郷を偲びながら労働者達が歌う民謡にはアイリッシュ移民の想いが詰まっている。また、エイリッシュが故郷を強く思う時、決まって鮮やかな緑色の服を着ているのだが、緑はアイルランドのナショナル・カラーでもある。今のアメリカを築いてきたアイリッシュ移民を捉えた新たな名作。







ケルトの不屈の精神

マイケル・コリンズ(1996年/イギリス・アイルランド・アメリカ合作)

700年間イギリスの支配下にあったアイルランドを独立(1921年)へと導き、31歳で短い生涯を終えた、実在の英雄マイケル・コリンズの波乱万丈の半生を描いた作品。監督のニール・ジョーダン、主演のリーアム・ニーソンともにアイルランド出身で、強い意志と情熱を注いで作られた力作だ。1916年のイースター蜂起に端を発するアイルランドの独立運動の歴史を知るには、まずはこの作品から入るのがいいかもしれない。蜂起の失敗、収容、一般市民への無差別虐殺(血の日曜日)、交渉の失敗、多大な犠牲など、度重なる苦境にも決して折れることなく独立のために戦い続けたコリンズのカリスマ性は、ケルトから受け継がれてきた不屈のアイリッシュ魂そのものであり、その精神は今でもアイルランド人の心の中に生き続けている。
ちなみに、キューバ革命の英雄チェ・ゲバラもアイルランド系の血筋で、コリンズの影響を受けていたという。




麦の穂をゆらす風(2006年/アイルランド・イギリス合作)

「マイケル・コリンズ」同様、独立運動さなか1920年代初頭のアイルランドを舞台とした歴史ドラマ。独立戦争とその後の英愛条約の内容を巡って起こった内戦によって引き裂かれた兄弟の悲劇が描かれている。社会の底辺に生きる人々を撮り続けてきたケン・ローチ監督が、何世紀にも渡るイギリス支配下のアイルランドという歴史的弱者にスポットを当て、「民衆」の不条理な苦しみや悲しみを描き切った。全編に渡ってみることができるアイルランドの山や丘や、自然の風景がリアリズム溢れる描写を引き立たせている。
なお、タイトルは独立戦争を歌った同名のアイルランド民謡(レベルソング)から取られており、ドロレス・ケーン、ロリーナ・マッケニットソーラスなど数々のケルト・ミュージシャンによって今も歌い継がれている。




アンジェラの灰(1999年/アメリカ・アイルランド合作)

ピューリッツアー賞を受賞したフランク・マコートの小説を「ザ・コミットメンツ」のアラン・パーカー監督が映画化。世界恐慌の波を受けた1930年代のアイルランド、リムリックが舞台。ニューヨークから祖国に戻ったアイルランド移民一家の悲惨な極貧生活を、長男フランクの視点で描いている。呑んだくれの父親、物乞いで食いつなぐ日々、汚物汚水にまみれた家、次々と亡くなる赤ん坊や子供たちと、とにかく次から次にこれでもかと極貧の凄惨さを見せつけられるのだが、そんな中でもユーモアを失わず、夢を見ながらひたむきに成長していく少年フランクが愛おしい。明るく希望を失わず、最後にアメリカに渡っていくフランクの姿はかつての不屈のアイルランド移民たちの姿そのものかもしれない。




ブレイブハート(1995年/アメリカ)

イギリスのケルト圏であるスコットランドの、タイトル通り困難や危機を恐れない不屈の心を描いた作品。イングランド王エドワード1世の過酷なスコットランド支配に対して、激しい抵抗運動を行なったケルト人の英雄ウィリアム・ウォレスの生涯を描いている。最後にウォレスはイングランド軍に捕らえられ残虐刑に処されるが、それがきっかけでスコットランドの国民感情が鼓舞され、ついにはエドワードのスコットランド支配は崩壊する。どんな残虐な弾圧にも屈しなかったウォレスの姿は、のちのマイケル・コリンズにも繋がっていくように思える。
戦いの最中、英国に安く雇われたアイリッシュ兵は最も危険な先頭列に並ばされ、槍を持ち、いざ、戦わんとする。が、敵方スコティッシュに知己を見たアイリッシュたちは「やあやあ、お前か!」と槍を捨て、両者同胞ケルトは互いに抱き合って再会を喜ぶのである。このいちシーンは戦いよりも理屈よりも人間が大事という「ケルトの人間性」が出ていて、素晴らしい。







ダブリン発の青春音楽映画

ザ・コミットメンツ(1991年/イギリス・アイルランド合作)

アイルランド青春音楽映画の傑作。ダブリンの労働者階級の若者ジミーが本格的なソウル・バンドをやりたいとメンバーを募って「ザ・コミットメンツ」を結成。バンドは次第に人気が出てくるが、数々のトラブルを抱えていく…。「アイルランド人は、ヨーロッパの中の黒人だ」というセリフに象徴されるように、全編に渡ってダブリン労働階級者の活き活きとしたソウルと誇り、そしてエネルギーに満ち溢れている。ダブリンの若者たちの鬱屈したエネルギーを凝縮・爆発させたようなパワフルなライブ・シーンは熱気に溢れ、圧巻。
アラン・パーカー監督は、本物のダブリンの若者のエネルギーを取り入れるため、出演者を地元のオーディションで選出。アイルランドの世界的グループ、ザ・コアーズはこのオーディションのために結成され全員が出演したほか、『once~ダブリンの街角』の主役のグレン・ハンサード、U2のアルバム「Boy」「War」のジャケット写真の少年も出演している。『リンダ リンダ リンダ』の山下敦弘監督にも多大なインスピレーションを与えた。




once~ダブリンの街角で(2007年/アイルランド)

アイルランド・ダブリンの街中で、売れないストリートミュージシャンの男と、チェコの移民の女が出会い、音楽を通して心を通わせていく、爽やかで切ないラヴ・ストーリー&青春音楽映画。「ザ・コミットメンツ」から15年、国際都市となったダブリンが舞台。90年代の後半から「ケルティック・タイガー」と呼ばれる急激な好景気が訪れたダブリンだが、2007年にはその好景気も終焉に近づいていた。変わらぬ労働者層に加え、新たに移民労働者達という低所得者層が生まれていく。そんな2000年代の新たなダブリンの鬱屈した若者達をリアルに捉え、夢と希望を追う彼らの姿を描いている。
低予算・短期間(制作費10万ドル・撮影期間17日間)で作られ、最初は全米の上映劇場はたった2館から始まったが、口コミが話題となり、世界的大ヒットとなった。主役の二人はスウェル・シーズンというデュオのグループで活動しており、彼らの多数の楽曲が映画本編に効果的に使用され、サントラ盤も大ヒット。映画の公開に合わせて、日本を含むワールド・ツアーを行い成功を収めた。




シング・ストリート 未来へのうた(2016年/アイルランド・アメリカ・イギリス合作)

1985年のダブリンを舞台に、サエない日々を送っていた男子高校生の人生が、一目惚れした女の子の気を引くためバンドを結成し、成長する音楽青春ドラマ。脚本・制作・監督は『once ダブリンの街角で』のジョン・カーニー。ストーリーはカーニーがダブリンで過ごした子供時代を、半自伝的に描いたもの。全編に渡って使用されている80年代のロック/ポップス、当時のファッションなど、80年代のカルチャーを楽しめるのも見どころ。
80年代は、アイルランドの音楽がイギリスやアメリカの音楽シーンでも頭角を現し始めた時代。80年代初頭にエンヤ、U2が世界的な道を開き、半ばになるとポーグスやザ・ウォーター・ボーイズなどがそれに続いていくことになる。イギリスやアメリカの音楽に憧れるだけだったアイルランドが世界の音楽シーンで大きく注目され始めた時代だった。この映画の主人公コナーもイギリスの音楽に憧れながらオリジナル曲を作り、ロンドンで成功することを目指している。こういった無数の少年たちの夢と熱意が、アイルランドから世界へ自分たちの音楽を届けていくことになったのだろう。